新しい里山づくり活動を楽しく実践、そしておもしろく提案を!
岐阜県郡上市にある「郡上八幡自然園」に訪れた子供たちを対象にした、自然体験活動を支援するボランティアグループ「メタセコイアの仲間たち」(1999年設立)の一事業として、2009年度に始まった「猪鹿庁」。中山間地での里山保全活動を軸に、里山と関係を持つ多くの人たちと繋ぐことで、循環する新しい里山作りの活動を楽しく実践し、狩猟や商品開発(6次化産業)を通じたまちづくりを目指し、「自分たちにできることから取り組もう」という平均年齢約30代の若者のグループである。
代表を務める興膳さんは福岡県出身のいわゆるよそ者。岐阜大学で「持続可能な地域社会をつくるために若者をどう活かすか」をテーマに研究していた際、郡上市を訪れ、魅力に惹かれ移住することになった。他のスタッフもほとんどがよそ者で構成されているが、よそ者だからこそ見えること、できることもあり、その想いこそが猪鹿庁の活動特徴になっている。
猟師事業は地元猟師との敷居の違いを味わいながらスタートし、少しずつその距離を縮めていった。その後、鉄砲免許を取得したメンバーを加え、地元猟師を体験する一方で、あらたな商品開発や各種エコツアーを開始し、2010年度から猪鹿庁を名乗りだすことになる。
猟師は里山保全者である!
活動を進めていくにしたがって、湧いてきた疑問があった。
猟師さんはみんな良いイノシシを捕るためには良い山が必要だと分かっていながら、猟師は山のことをあまりやっていない、ということだった。海の漁師が森林づくり活動を行う事例は各地にあるが、猟師によるものはあまり聞かない。そこで2012年度から始めたのが、地元猟師を巻きこんだ「猟師と漁師の里山保全プロジェクト」。郡上市の協力を得て、郡上市の友好都市である三重県志摩市の漁師を招き、森林づくり活動や意見交換などを行っている。
良い里山を考えることで、改めて見えてきたのが野生鳥獣による農業被害であった。そこで猪鹿庁が始めたのが、集落単位で農家がイノシシやシカを捕獲する手伝いをしていこうという「守り捕獲する集落倍増計画」だった。方針は主に3つ。
①狩猟免許の補填
免許を持っていない農家集落では、猪鹿庁メンバーの狩猟免許保持者が捕獲。そして各集落に一人の狩猟免許保持者がいる状態を目指す。
②捕獲の支援
センサーカメラや捕獲檻、くくり罠などを無償で貸し出し、設置のアドバイスや定期的な見守りも行う。
③確保後の処理
止め刺しや解体などの処理は猪鹿庁が無償で行う。肉が必要な場合は、解体賃を支払えば対応可能。
この支援事業の狙いは、山肉を自分たちの生産物と意識してもらう。つまり猟師の育成。猪鹿庁が行っているのは、そのための仕組みづくりであり、人材育成活動であり、里山保全活動なのである。
6つの課からなる猪鹿庁
●捜査一課 地域に根差した猟師を育成
●山育課 日本一旨い猪が獲れる山を育てる
●衛生管理課 山肉精肉所の普及
●ジビエ課 里山の全ての命を生かす
●研究課 持続可能な里山ライフを構築
●広報課 猪鹿庁ビジョン加速のため協力者(支援者)を増やす
(文・写真提供 猪鹿庁HP/参考資料 国土緑化推進機構機関紙「ぐりーん・もあ」)
HP http://inoshika.jp/
FB https://www.facebook.com/inoshikatyo
2013/11/6 更新