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小さいひと粒ひと粒に託された自給率アップという夢 はじまりの種〈greensmile〉

日本人はゴマが好き、だけど自給率は恐ろしく低い

食用油の素材として、和食のアクセントとして、日本人が愛してきた作物のひとつあるゴマ。その歴史は古く、6000年前のアフリカ大陸ですでに栽培されていた痕跡が残る。日本では縄文時代から栽培されていたといわれ、中国大陸もしくは朝鮮半島から伝来したと考えられている。栄養価の高い食品として知られ、生薬としても用いられた。粒は小さいが実力のある野菜である。

現代でも、ゴマ油やゴマ塩はどの家庭でも重宝される食材で、ほうれん草のゴマ和え、大学芋やゴマ豆腐といったおかずから、黒ゴマペーストや金ゴマドレッシングなどの調味料でも、私たちはゴマのお世話になっている、ということは言及するまでもない。

長年日本人に親しまれてきたゴマであるが、その自給率は、驚異的に低い。なんと0.1%、つまり99.9%は海外からの輸入に頼っているというわけだ。日本のゴマの輸入額は、約400億円(2012年調べ)といわれるから、輸入してでも日本人はゴマを大量に食べ続ける。

動き出したのはgreensmileという団体
ゴマ栽培のフィールドは東京都本土唯一の村である檜原村

2011年から「都会」と「田舎」をconnect! (つなぐ)活動を、東京都西多摩郡檜原村で行ってきた任意団体greensmile(以下グリーンスマイル)は、ゴマの自給率アップに向けたプロジェクトを2013年からスタートした。グリーンスマイルとは、主に東京圏の都市部在住のメンバーが檜原村の耕作放棄地を耕して野菜を栽培し、同時に村内で交流イベントを行い、村へのインバウンドを狙った活動を行っている団体である(グリーンスマイル詳細はこちらhttp://jimoto-b.com/351)。彼らが、檜原村の耕作放棄地でゴマの栽培をはじめた理由は2つある。

ひとつは、前述の自給率の低さを知ってショックを受けてしまったゴマ好きのメンバーが、自給率アップに向けた活動をやってみたいと思ったこと。そして、もうひとつは、東京都でありながら、島嶼部を除く唯一の村である檜原村の、地域活性に役立てられないだろうかと考えたことだ。

グリーンスマイル ゴマゼロワンプロジェクト

去年の種を今年の畑へまく

檜原村は人口約2,500人の山間の村で、65歳以上の人口比率が45%という限界集落崖っぷちの村である。山の斜面を切り開いて作られた畑は、持ち主が高齢で耕せなくなってしまった耕作放棄地が多数ある。グリーンスマイルはその土地を活用して、ゴマの栽培をはじめた。檜原村には秋川渓谷の清らかな渓流や浅間尾根などの登山道、払沢の滝や神戸岩といった人を惹きつける大自然スポットが多数ある。普段東京の真ん中であくせく働き、休日には大自然による癒しを求める若者が多数、グリーンスマイルの呼びかけに応じた。

グリーンスマイル 東京ゴマ0→1プロジェクト

みんなで丁寧にひと粒ずつ種をまく

舞台と役者がそろった、あとはチャレンジするしかない! 檜原村だって東京、だから檜原村で収穫したゴマは東京の自給率をほんの少し上げてくれることになる(理論上は)。プロジェクト名は、「東京ゴマ0→1(ゼロワン)」(以下ゴマ01)、0を1に、つまり0.1%の自給率を限りなく1%に近づけようという目標を示したもの。

2013年5月に種をまき、初夏までに間引きをして生長させ、10月に収穫。9月に東京を襲った台風を乗り越えて1年目のゴマ01は無事に収穫を終えることができた。ゴマの大変さを知ったのはここからだった。収穫したゴマを乾燥させ、カラカラになったところで、莢から取り出す。取り出したゴマは細かいゴミを取り除き、洗って「洗いゴマ」にしたり、炒って「炒りゴマ」にする。

ゴマはとにかく、小さい。混ざったゴミをざるやふるいにかけて取り除く作業の骨の折れること折れること。洗う際にはゴマが流れてしまわないよう、冷たい水の中で細心の注意が必要になる。そういうことだったのか、と、メンバーも納得――、ゴマは精製が大変、だから農家さんもあきらめてしまったのだと。

グリーンスマイル ゴマゼロワンプロジェクト

精製作業

11月までかかった精製作業を終え、2013年のゴマはパッケージングしてグリーンスマイルが品川で毎月開催している「全快野菜ちゃん」というマルシェで販売された。これは、まさに100%ピュア東京産のゴマ。スーパーで売っているゴマよりはるかに高い値段になってしまうが、「国産」をめずらしいと気に入ってくれる消費者もいることが分かったし、続けていく勇気にもなった。収穫したゴマの一部は2014年の種とした。

2013年はとにかく前のめりにチャレンジした年だったが、2014年は飛躍の年としている。2014年4月12日、グリーンスマイルの呼びかけで、大人17名子ども4名のメンバーが集まり、ゴマの種を植えた。もちろん東京の檜原村で。

傾斜のきつい耕作放棄地をみんなで耕し、畝を作って、丁寧に丁寧にひと粒ずつ大事な種をまいていく。檜原村で採れたゴマの種で、また新しいゴマを栽培する。人間でいうと、親から子へ受け継がれていくような営みが畑にある。

これから10月に予定している収穫までの間、ゴマの生長を見守っていく。そして今年もゴマの種を採り、来年また、栽培する。来年は3代目、孫の年。グリーンスマイル ゴマゼロワンプロジェクト

今年は全国でゴマの自給率アップ!

2014年グリーンスマイルは、東京だけではなく、全国展開にチャレンジする。まず、広報活動として、PVプロボノ(NPOなどの団体にプロの映像制作チームがPVを制作し提供する活動をしている団体)に応募し、3分間のゴマ01のプロモーションビデオを作った。

自分たちは檜原村で東京ゴマ01を続けていくが、日本各地でゴマ01に参加する人たちを募ってみた。参加方法は2種類。畑を持っている農家さんにゴマを栽培してもらう「サテライトゴマ01畑ヌシ」(以下ヌシ)と、ベランダのプランターや庭先でゴマを栽培してもらう「ゴマ01里オヤ」(以下オヤ)だ。ヌシとオヤどちらにも檜原村で採れた種を送る。ウェブサイトで募集を告知したところ、東京・千葉・神奈川といった関東から、新潟、大阪、奈良、鳥取、宮﨑、鹿児島など全国20か所を越える地域から申し込みがあった。

檜原村の種が、全国に広がり、そこで新たな種を生み、また別の土地で栽培されていく。ゴマひと粒は、とても小さい。だけど、つながって、ひろがって、いつか全国の自給率が1%になる日がくるかもしれない、夢のあるひと粒だ。

2014年4月13日、全国のヌシとオヤそれぞれの自宅へ、ゴマ01への想いを綴った手紙とゴマの栽培方法の説明書きが添えられて、檜原村の種が発送された。パッケージには、こう記されている。

これは“はじまりの種”
小さなゴマから始まる大きな夢
日本のゴマ自給率を0.1%から1%にしたい!

黒川豆(文・写真)

【FB】greensmile

グリーンスマイル ゴマゼロワンプロジェクト

自給率のアップへ向けて全国のヌシとオヤへ種を発送


2014/4/17 更新

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