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ものづくりのまち「鯖江」を訪れて(2)〜めがねづくりの現場・メタルフレーム編〜

前回の、〈ものづくりのまち「鯖江」を訪れて(1)〜産地がかかえる「課題」と「想い」〜〉では、「めがねの聖地」とまで呼ばれるようになった鯖江のめがねの歴史から、いま鯖江が抱えている課題と取り組み、作り手の想いを紹介してきた。今回からは2話にわたり、めがねの製造工程とそこで触れた現場の想いを紹介する。

今度の鯖江探訪では、実際に2社のめがね工場を見学させてもらった。鯖江市内には約600の眼鏡関連事業所数があるのだが、その半数以上は4人以下の事業所だという。作業工程数が数百にも及ぶめがねづくりは、徹底した下請分業体制が敷かれる中、専業化した個人事業者が多いという特徴がある。
それは、市内に点在する様々な部品をつくっている事業所を車で一周してくると、めがねが出来上がる、といってもいいくらいの分業化だそうだ。

案内してもらった工場は、「メタルフレーム」と「プラスチックフレーム」それぞれ一社ずつ、いずれも全ての工程を自社で行う一貫生産メーカーだ。
まず今回紹介するのは、メタルフレームの一貫生産メーカーである竹内光学工業株式会社。めがねフレームの企画、デザイン、製造、販売までを自社で行い、自社のオリジナル商品も販売している数少ないメーカーのひとつ。営業部の市橋さんに案内してもらい、工場を一周してきた。ひとつひとつの工程や、作業している職人さんの手元を食い入るように見ていたら、予定よりかなり時間をオーバーしてしまったのだ。。。なぜならば、メタルフレーム一枚を完成させるために、約300にも及ぶ工程を掛けるからである!残念ながらここでは簡単な流れで紹介していく。

1.企画・デザインからCADデータへ
お客様からもらった、手書きやイラストレーターなどで作られたラフ画をもとに、忠実に図面化(CADデータ)。なかには、「あの海外のスターが掛けてるモデルをアレンジして」とか「50代が似合う高級なイメージに」などといった抽象的なオーダーを具現化するといった例もあるという。また、最近では3Dソフトによる設計も行われている。
鯖江 めがね 眼鏡 メガネ メタル フレーム めがねの聖地
2.金型、治具制作からプレス加工
CADで設計されたデータを使用して、数種類の切削器を用い金型や治具を製造。機械では表現できない繊細な部分は「熟練職人の手」が加わることで、光学品・宝飾品としての雰囲気が出てくる。ここで出来上がった金型を使用してチタンなどの素材を利用し、プレス加工へ。
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3.切削、ロウ付け
プレス加工で出来上がったパーツを、図面と照らし合わせながら各寸法をチェックし、パーツとなる各部分の切削、寸法出しをおこなう。寸法通り切削されたパーツは、「ロウ付け」と呼ばれる接合する技能で、めがねフレームの形になっていく。ここでもまた、熟練職人の手仕事が重要な役割を担っている。
鯖江 めがね 眼鏡 メガネ メタル フレーム 竹内光学工業
4.研磨
細かく砕かれた「くるみ」の殻が入った機械に、めがねフレームを入れて表面研磨加工をする。これを「ガラ入れ」という。粗いガラから細かいガラまで3段階にわたって研磨。「ガラ入れ」が終わると、さらに熟練職人の手によって1枚1枚手磨き加工をおこなう。
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5.メッキ加工から最終仕上げ
研磨加工の終わっためがねフレームは、メッキ処理に出される。メッキ加工が施されたものは、1枚1枚手作業で鼻パッド、モダン(耳当て)、レンズなどが取り付けられ、最終調整、検品がおこなわれ出荷。ここでもまた、熟練職人の目や手が生きてくる。
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実際に工場を見学して思ったのは、PCでの設計からはじまり、大小様々な工作機械で作られているめがねフレームも、大事な場面では必ず熟練職人の手や目が必要だということだ。ものづくりにおいて欠かせない職人の技。材質の違いや、大きさ・太さ・厚みという形状の違いを見極め、ミリ単位の面と面を接合するロウ付けなど、一見単純な流れ作業にしか見えないような作業でも、一朝一夕では身につけられない熟練の技がそこにはあった。
しかしいま、その「熟練職人の技」は、高齢化や後継者不足によって技術継承が不安視されている。後継者育成の取り組みについては前回紹介したとおりだが、大規模の一貫生産メーカーでも抱えている問題だ。また、「OEM主体から提案型のメーカーへ」という課題に対する取り組みも、もちろん行われていた。

「機械ひとつをとっても、自分たちで改良を重ねオリジナルの機械に仕上げていく。そうすることで自分たちにしかできない技術を作り上げる。ソフト面においてもどんどん提案していく。それができないと落ちていくだけ……自分たちにしかできないチャレンジをして、工場の付加価値を上げていかないと。」と語る市橋さん。最近首都圏の大企業から、めがねづくりがしたいと若者が転職してきた。畑は違えど3D設計の経験が貴重な武器になっているという。
工場を一周してみてもうひとつ思った事があった。想像していたより若い人が多かったということだ。外から地元から…鯖江のめがねづくりを繋げていこうと、若い力が勢いを持ち始めた印象を受けた。(文・写真 地元びいき 津久井卓也)

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工場の案内をしていただいた
竹内光学工業株式会社 営業部 市橋さん

取材協力:鯖江市 産業環境部 商工政策課、竹内光学工業株式会社

シリーズ完結編も一読を!
ものづくりのまち「鯖江」を訪れて(3)完〜めがねづくりの現場・プラスチックフレーム編〜


2014/2/5 更新

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