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年に1度のプレミアムな食「新米」をおいしく食べよう!

年に1度のプレミアムな食「新米」をおいしく食べよう!

日本全国新米の時期ですねぇ。お米屋さんの店頭でも、通販のトップページでも、続々と登場しています、新米。私の地元新潟からもそろそろ電話がかかって来そうです、「新米できたから送るねー」と。なんかいいですよね、新米は“収穫の秋”感が半端ない。これは日本人が米を主食とし、江戸時代までは土地の豊かさの単位(石高と年貢)でもあったものですし、それだけ他の穀物とは別格のありがたみを感じるのでしょう。稲穂

ところで、米は日本中どこでも栽培されている穀物ですが、長い地形の日本列島、収穫の時期は地域によって異なります。早稲や晩稲といった品種の違いもありますが、気候の違いで田植えや稲刈りの時期が変わります。ということは、日本の南と北では新米のシーズンも違ってくるはずです。沖縄ではなんと6月、九州では8月、北陸で9月、新潟・東北で10月、北海道では11月が収穫時期。関東に住んでいると新潟や東北のお米を食べる機会が多く、私の周りではちょうど今ごろ新米を食べはじめたという人が多いようです。そういえば、収穫への感謝祭の意味を込めたお祭りが多いのは、新米の時期と重なりますね。気になるので神事と新米の関係について調べてみました。

新米はすぐに食べてないけないの!?

秋の宮中祭祀に新嘗祭(にいなめさい)というものがあります。日本では、古くから五穀の収穫を祝う風習がありました。その年の収穫物は国家としてもその先の一年を養う大切な蓄えとなることから、大事な行事として飛鳥時代の皇極天皇の時代にはじめられたと言われています。伊勢神宮では、10月15日と16日に神嘗祭が行われ、その年の新米が初めて神前に供えられます。伊勢神宮の神主さんは、その日まで新米を絶対に口にしないそうです。

日本では、古来、新物はまず神様にお供えして、その後、みんなでごちそうになるという風習がありました。だから、今でも米農家さんや年中行事を大切に暮らす人々の中には、11月23日の新嘗祭が終わるまで新米を口にしないという人もいます。あ、私はもう1か月近く前から食べはじめてしまっています。もっと早くこの記事のための調査をしていたら、食べなかったのに……。炊いたご飯ところで、11月23日は、勤労感謝の日で祝日です。これは1948年の国民の祝日に関する法律で制定されました。新嘗祭の日が第二次世界大戦後のGHQの占領政策によって、天皇行事・国事行為から切り離される形で改められ、制定されたものが「勤労感謝の日」です。これは勝手な解釈ですが、勤労に感謝するのも、収穫に感謝するのも、結局は体を動かして生活の糧を得られたことへの感謝ということで同じですね。

「新米」米農家さんの「新米」

さて、話を新米に戻します。つい先日、10月18日に私が所属しているgreensmile(以下グリーンスマイル)という団体が運営しているマルシェ「第17回全快野菜ちゃん」を開催されました。グリーンスマイルは、「都会と田舎をつなぐこと」をテーマに、東京都檜原村でゴマなどの作物を栽培したり、品川区で全国各地の農作物を集めてマルシェをひらき、都会の方々に地方のこだわり野菜を届けたりしています。(グリーンスマイルについて、詳しくはこちらをご覧ください。)このマルシェで鳥取の新米を販売しました。

この新米というのが、ちょっと面白い新米なのです。生産者は白川大介さん(33)という方。白川さんは2014年の4月に東京都から鳥取県鳥取市鹿野町に移住し、後継ぎのいない米農家さんに弟子入りしました。ははーん、白川さん、もともと農業の知識があって脱サラして農家になるのが夢だったんだ~、と思ったら、ノーノーノー。実は、農業に関してはど素人。東京ではブランディングという仕事で会社勤めをしていました。結婚してお子さんができたくらいから、田舎暮らしを真剣に考えはじめ、ひょんなことから鳥取の友人に紹介された仕事が米農家。そこに、ひょいっと飛び込んでしまったというわけです。つまり、この人そのものも新米、だから新米が作った新米なのです。

ちなみに、仕事をはじめたばかりのまだ経験のない人のことを「新米」と言いますが、ベテランを「古米」とは言いませんよね。この「新米」は、もともとは、江戸時代の商店で新入りの店員が新しい前掛けを着けていたのを「新前掛け(しんまえかけ)」と呼び、これが省略されて「新前(しんまえ)」になり、さらに訛って「新米(しんまい)」に変化したとする説が有力で、新しい米を意味する新米とは直接関係ないそうです。

話を白川さんに戻します。彼はマニュアルの車の運転などしたこともない、東京都北区のマンション暮らしから一瞬で、軽トラやトラクターの運転が欠かせない田舎の米農家に転身しました。草刈りなどの朝仕事からはじまり、日中は田んぼの世話、夕方まで農作業をして、肉体を酷使。移住から3か月後に鳥取を訪ねてみたら、色白でひょろひょろした白川さんはもうそこにはいませんでした。苗が稲穂になって頭を垂れてくる米の成長と共に、彼も農家として成長をしていったようです。その様子は、4月の移住から、はじめての収穫までほぼ毎日綴られている「ど素人の新規就「農」ブログ」でとても面白く表現されています。

つぎコメプロジェクト

「白川さんちのおいしいお米」と命名された、はじめての新米、これがマルシェで飛ぶように売れました。販売予定数がすぐに完売となり、急きょ袋詰めをしたくらい。試食販売というカタチで、白川さんの奥さんが愛情たっぷりにやさしくにぎったミニ塩むすびを訪れた方々に食べてもらっていました。口にした人は、老若男女「うまい! 」とにっこり。白い飯を食べてにっこり笑うのって、日本人だなぁと心が和みます。この米は白川さんが提唱するつぎコメプロジェクトのひとつの商品。

白川さんちのおいしいお米つぎコメプロジェクトとは、「若手農家の活力が日本の活力となる! 」というもの。具体的には、次のように説明しています。
「コメ農家の後を継ぎ、次世代につなぐコメ。つぎ込むお金はなくとも、継ぎ・次への情熱はつぎ込める! 若手米農家がお米をつなぐプロジェクトを始めました。」(白川さんちのおいしいお米ホームページより)

白川さんちのおいしいお米米に関しては、他国に比べて日本がダントツの後継者不足。米農家が世襲制のような様相を呈し、後継ぎがいなければ廃業に追い込まれるというのは、米と土地の結びつきが非常に強かった日本の特徴であるのかもしれませんが、家族や血縁でなくても、後を継ぐ者がいてもいい時代になったのかもしれませんね。

白川さんちのおいしいお米「このマークをいろんな若手生産者に使ってもらいたい! そしてこのマークのあるお米を選ぶ、という買い方もアリだね! っていう生活者の仲間を作りたい!」(白川)
日本の「新米」を守るためにも、消費するだけの私たちが、意識をもって米を選ぶことも大切な気がします。

「新米」に思いを馳せたところで、最後に。せっかくの年に1度のプレミアムな食「新米」を食べるのに、白飯を正々堂々食卓の主役にしてあげたいですよね。名わき役となるようなおかずを探し、白飯を引き立ててあげて、楽しみたいものです。
インターネットで「ご飯にあうおかず」などと検索すると、NAVERまとめをはじめとしてたくさんのサイトが出てきます。納豆、辛子明太子、鮭の塩焼き、梅干し、生卵、イカの塩辛、味付け海苔、糠漬け、どれをとっても何杯も行けちゃいそうですが、あなたなら、何にします?

おかずは何であれ、新嘗祭を待たなくてもいいので、「新米」に対してこの先1年の食に感謝をし、おいしくいただきましょう。(文・写真 黒川豆)


2014/10/28 更新

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