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神様にだって得意不得意がある?

機会があって、日本の神話の絵本「いなばのしろうさぎ」を読んだ。皮をはがされて泣いていたかわいそうなうさぎを大国主の命(おおくににしのみこと)、のちに出雲大社に祭られる神が助けた、という話しはご存じの方も多いだろう。

これには続きがあって、泣いていたうさぎに嘘をついてますます痛い目にあわせたのが大国主の兄たちで、この兄たちは、噂の美女神八上姫(やがみひめ)に求婚したが、「わたしは大国主様以外の男性とは結婚しません!」とあっさりとふられてしまった。日ごろより兄たちにこき使われていた大国主が因幡(いなば)の国を治める美しい八上姫と結ばれて、幸せに暮らしたとさ、ちゃんちゃん。というハッピーエンドが一般的に信じられている。大国主 因幡の白兎さて、大国主が祭られた出雲大社は、日本でも海外からの観光客からも大人気の縁結びの神様。縁結びというと、男女の出会いを筆頭として、人と仕事や、取引先や、友人などとのご縁も願われている。「いなばのしろうさぎ」的に考えると、大国主はかわいそうなうさぎを助け、兄たちに従順でやさしいうえ、噂の美女にモテて結ばれた。だから縁結びの神になったのだろうか――。

と、この予想は当たっているのかどうなのかは置いておいて、じつは、「いなばのしろうさぎ」にはさらなる続きがある。自分たちを裏切って(実際は好かれてしまっただけなのだから仕方ない)八上姫と結ばれた大国主が憎くてたまらない兄たちは、だまして殺してしまう。母神に助けられて大国主が生き返ると、再度殺してしまう。母神がもう一度生き返らせても、しつこく命を狙ってくる。ここで母神がとった手段が、「もうここにいても兄たちに殺されるだけ。ご先祖様のスサノオノミコトがいる黄泉の国(よみのくに)へ行きなさい」というもの。大国主はご先祖様が暮らす黄泉の国に向かって遥かなる旅に出るのだった。
ここで絵本はThe end。

出雲大社はなぜ縁結びで有名なのだろうか

戦線離脱? 八上姫は? 結婚は?出雲大社そう思ったのは私だけではないだろう。現代の私たちからすれば、大国主は縁結びの神なのだから、ちゃんと結ばれてもらわなければならない。兄たちほどではないがしつこい私は調べた。この続きを。

黄泉の国へたどり着けた大国主は、スサノオの娘とできてしまった。それもこっそりと。娘に手を出した男にスサノオは怒りまくり、いろいろないやがらせをする。それを、兄たちのいじめで鍛えられていたのか、大国主は見事にかわし、黄泉の国から嫁連れで出雲の国へ戻ってきてしまうのだ。もともと婚約していた八上姫も、その後もうひとりの奥さんとして迎えられた。(かわいそうに、八上姫は子を産んだ後に身を引いて実家に帰ってしまったようだが、)結局、大国主はふたりの美女とこの時点で結婚している。ということで、縁結びにつながっていくのだろうか。

さらにしつこく調べてみると、男女のどうのこうのではなく、国をつくった後、国を天孫に譲り(国譲りと呼ばれているできごと)、大国主は神事を治めることになった。現世からは見えないところで縁を操っている神ということで、江戸時代の井原西鶴の「世間胸算用」には、仲人(なこうど)の神と書かれているらしい。そのあたりから縁結びの神になっていったのではと言われている。たぶんこれが有力。

日本全国に縁結びの神がある。大国主ほど壮大スペクタクルではなくても、なんらかの、縁を結んだストーリーがある。

例えば、東北の伊勢と呼ばれる山形県の熊野大社は、「ああ、なんて素敵な女性なのだろう」「ああ、なんて素敵な男性なのだろう」というセリフを交わし合った、日本最古のプロポーズをして結ばれたと言われる、イザナギノミコトとイザナミノミコトを祭った神社。それゆえ、縁結びの神として有名だ。

縁結びに限らず、日本全国には、〇〇にご利益のある、〇〇の神様と呼ばれる神社が多数ある。壮大スペクタクルな前書きになってしまったが、今回は、さまざまなご利益のジャンルからいくつかをピックアップして、ある特徴を持った神様を祭る神社を紹介したい。

気象の神様を祭った氷川神社

今年の9月は、日本全国がいわゆる“ぐずついた”天気に見舞われる日が多い。大雨による痛ましい被害、公共交通機関の乱れ、外で乾せなくてなんとなくにおう洗濯物、行楽シーズンでもあるし、カラっと晴れてもらいたいものである。こんな時は、どこにお願いするか。

東京都杉並区高円寺に住んでいた時、近所に氷川神社があった。その神社の中に「日本で唯一のお天気神社」と書かれてあったことを思い出した。当時はとくに気にせず素通りしていたが、気象神社と言うからには、気象について、なんらかのストーリーとご利益を持つ神社なのだろう。気象神社 氷川神社気象神社は元々、昭和19年に設立された「陸軍気象部」の中にあったもの。戦後にGHQが出した「神道指令」により国家神道が廃止された際に撤去される運命の神社だったらしい。ところが政府の手続きミスで残ってしまったので、氷川神社が払いうけて今の場所にもってきたというストーリーがあった。

なぜ陸軍に気象部があったかというと、当時飛行機を飛ばすことを含め、戦闘がお天気に左右されることもあったから。一説では、風船爆弾の研究をやっていたところだったとも言われている。

祭られているのは八意思兼命(やごころおもいかねのみこと)という神様で、知恵の神様として「古事記」に登場するとのこと。ちなみにこの神社には「下駄の絵馬」が売られている。「あーした、てんきに、なーぁれー」の下駄占いと関係あるのだろうか(笑)

現代の悩みを聞いてくれる神社

江戸時代の庶民が神社に行ってお願いをしたのは、次のようなものが多かったという。

頭痛、疱瘡(ほうそう)、虫歯、百日咳(ひゃくにちぜき)、怪我除け、夫婦仲、蛇除け、脚気(かっけ)、眼病、痔(ぢ)、いぼ取り、安産、盗賊除けなど。

健康に関するものが多いのは、医療が進んでいないので、病気平癒も神頼みということが多かったからだろう。庶民の願いは、時代とともに変遷する。いつの時代にも共通なのが、家内安全、無病息災、商売繁盛であるが、高度成長期以降、にわかに増えた祈願がある。交通安全と入学試験の合格祈願だ。急速なモータリゼーションによって車の交通量が増えるとともに、増えた交通事故と、学歴社会の到来で増えた受験。

現代にいたっては、サラリーマンのリストラ除けの神様(正確にはお地蔵様)まである。東京都練馬区にある中村八幡神社の裏手には、首つぎ地蔵というお地蔵様がある。首がなかった地蔵の胴体に関東大震災後に持ち込まれた地蔵の首をつなぎ合わせたのでそういう名前がついたらしい。「首がつながる」ということで、「リストラ除け」が祈願されるようになったらしい。

男性が気になるかもしれない神社もある。京都府嵐山にある、御髪(みかみ)神社だ。名前でわかるように、神にまつわる願いを叶える神様として、薄毛・ハゲ防止を祈願する人たちが訪れるという。この神社の歴史は比較的新しく、1961年に京都市の理美容業界関係者らによって建立されたとのこと。尚、境内には切った髪を納める髪塚が存在している。御髪(みかみ)神社

自分の好みで祈願できる神社

好きなので、近眼女の私が個人的に気になっているのが、メガネの神様。山口県の玉祖神社は、三種の神器のひとつである「まがたま」を作った玉祖命(たまおやのみこと)がメガネの神様として祭られている。なぜかというと、レンズの別名が玉だから。ちなみに宝石やカメラの守り神でもあるそうだ。新しいメガネを買った時に、自分にしっくりくるように、長持ちするように、何よりかっこよく装えるように参拝したい気がする。その時には、使い古したメガネを奉納したりして(そのようなことをやっているかは不明)。

私たちの毎日に欠かせない時計にも神様がいる。滋賀県大津市の近江神宮は時計神社とも呼ばれる。祭られているのは、中臣鎌足と一緒に大化の改新を行った天智天皇。この天皇がなぜ時計の神様になっているかというと、日本で最初に時計(水時計)を作ったと言われるからだ。近江大津宮に遷都した際、作った水時計があったのが、大宮神宮付近だったとのこと。今でもその模型が置いてあり、どんな時計なのかを見ることができるらしい。

近江神宮には、「ときしめす守」というお守りがある。 「進むべき時を示し 進むべき道を説き示す」という願いが込められている。開運は時の一瞬が左右することがあるので、 チャンスを確実に獲得するために、決断と前進をしようという守護符だという。何やら大事なチャンスを逃していることが多いと感じているあなた、これは、ひとつ欲しいと思ったのではないだろうか。おみくじまだまだ気になる神社は多い。どうぜ参拝するなら、どの神社にどんな神様が祭られているかを調べて、自分の願いにピンポイントな神様を選ぶのもいいだろう。

とりあえず私は、漬物の神様が祭られている、愛知県あま市の萱津(かやづ)神社に参拝してみたい。香の物殿の前にある漬物石を3回なでると、漬物上手になるという。ぬか漬けが大好きだが、何度もぬか床をダメにしてしまった。かき混ぜて可愛がっていたのに、先日も……。ということで。(文・写真 黒川 豆)

紹介した神様のホームページ
出雲大社 http://www.izumooyashiro.or.jp/
熊野大社 http://kumano-taisha.or.jp/
氷川神社(気象神社) http://www.hikawajinjya.jp/
御髪神社 http://www.mikami-jinja.net/
近江神社 http://oumijingu.org/


2015/10/8 更新

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