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〈京都府〉昭和初期のラジオ塔復活 全国唯一、往時の姿で放送

昭和初期にラジオを共同で聞くために建てられ、京都市北区の船岡山公園に遺構として残る「ラジオ塔」が、このほど「復活」した。公園でラジオ体操をする市民が署名を集めるなどして管理する市に働きかけて拡声器と受信機を設置、放送が実現した。戦前は各地にあったが、研究者によると当時の姿で放送されるのは全国唯一に。近代化遺産の往時の姿が京でよみがえった。

ラジオ塔は1930年に大阪市内の公園で初めて建設された。多くはNHKと自治体が設け、戦前のラジオ年鑑によると全国に約400基あった。内部の受信機からラジオ体操やスポーツ中継、戦況を伝える放送が行われ、周囲に人が集ったという。

メディア史に詳しい元国立民族学博物館客員教授の吉井正彦さんによると、戦後は家庭でのラジオ普及やテレビの登場で数が減り、現存するのは全国で25基ほど。京都市内では円山公園(東山区)や橘公園(上京区)を含め、8基が確認されているという。

船岡山公園は、35年の開園時に建設された。長年受信機とスピーカーが外された状態だったため、「船岡山ラジオ体操クラブ」が修理を求める署名約1500人分や要望書を市に出してきた。クラブは機器と設置費を負担する形で修理を提案。市が受諾し、3月までに作業を終えた。

今月2日、復活したラジオ塔を使ったラジオ体操が初めて行われた。幼児から80代の約60人が参加し、塔の前で一つになって体を動かし、体操の輪を広げた。ラジオ塔の「現役」当時を知る近くの鷲尾泰男さん(82)は「公園に遊びに行ったら、ラジオ体操やニュースの音が流れていたもの。当時の風景が戻って良かった」と感慨深げだった。

「復活」を求める動きは全国で広がっている。堺市内の公園では、複製を新設しラジオ体操のメロディーを流すほか、新潟市内では経年劣化で壊れた塔の補修を続けている。群馬県や兵庫県のラジオ塔は登録有形文化財になるなど、価値を再評価する声は多い。

船岡山公園では、今後毎朝午前6時半から開かれるラジオ体操時に、ラジオ塔から放送を流す。クラブ代表の飯田勝巳さん(81)は「時代を超えて復活したラジオ塔の前に多くの人が集まる光景を、現代でも守っていきたい」とし、参加を呼び掛けている。(記事・写真 京都新聞より

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復活したラジオ塔の前でラジオ体操をする人たち(2日午前6時35分、京都市北区・船岡山公園)


2015/4/20 更新

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