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映画「かぐや姫の物語」にも採用された「かな料紙」〈常陸太田びいきな小坂の窓〉

こんにちは、「常陸太田びいきな小坂の窓」です。
みなさん突然ですが、子どものころの習い事は何をしていましたか?
いまは「英会話」や「学習塾」が主流のようですが、私が子どものころは「珠算」「書道」が王道で、友達みんなが通っていた記憶があります。かく言う私も「友達が行っているから書道を習いたい」の一声で始めたひとりです。まっ白な半紙に自分自身の文字を思いのまま書くまでには成長出来ず、最後まで先生のお手本を見て写す作業が書道と思っていました。でも有りがたい事に、今では筆で文字を書く事があまり苦にならなくて済んでいます。(両親に感謝)

ところで、文字には男文字と女文字がある事を知っていますか?(私は知りませんでした)
平安時代に、主に男性が用いていた「漢字」を「男文字」、主に女性が用いていた「ひらがな」を「女文字」と呼んでいました。この「ひらがな」いや「かな文字」を使い書かれた紙(かな料紙)の代表的な書物に源氏物語絵巻などがあります。

今回の「常陸太田びいきな小坂の窓」は、この高貴な紙にスポットを当て、平安時代より伝わる「かな文字」を書く為に生れた「かな料紙」の歴史、「かな料紙」製作過程などを報告します。

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「かな料紙」って何? と思われた方がほとんどでしょう。最近では、2013年11月に公開された高畑勲監督・スタジオジブリ制作の映画「かぐや姫の物語」にてオープニングの題名の背景とそれに続くクレジットの背景に「かな料紙」が使われ、映画の世界観を共有できる一場面となっています。
この「かな料紙」を作った職人が、今回私が「かな料紙」の世界を報告するきっかけとなった、常陸太田市在住の小室久さんです。
小室さんは1962年生まれで、「かな料紙」職人を父に持ち、「米田版画工房」にて摺師 米田 稔氏から伝統木版画を学んだ後、父である小室 義久氏より「かな料紙職人」を継承し、現在常陸太田市の工房にて多くの作品を製作しております。(作品の一部は以下に報告します)
身近な所に平安時代からの技を継承されている方がいた事に驚きと、その歴史・製作時の繊細な技をお楽しみいただきたく思い、以下に報告させていただきます。

 「かな料紙」とは
書道のかな文字を書くための用紙を「かな料紙」といいます。宮廷文化の花開いた平安時代は、平仮名、片仮名など、かな文字文化の発達の時代でもありました。この時期、日本独自のかな文字が発達し、この期間に多くの「古筆」と呼ばれる古典が残されています。その内容は、古今和歌集、和漢朗詠集、万葉集などです。古筆は、装飾された和紙に美しいかな文字で書かれています。古筆に使われている装飾された和紙をお手本としてかな料紙は作られています。その製作は、和紙を多彩な色に染め・版木で文様を摺り込み金・銀箔を撒き、いくつかの作業工程を経て、優美なかな料紙が出来上がります。雲母摺り(きらずり)のかな料紙を使用した継ぎ紙などは特別な存在感があります。

「かな料紙」が使われた歴史的古筆
ここでは、歴史的古筆を書く為に製作された「かな料紙」の種類と製作過程を説明します。

・西本願寺本三十六人家集
柿本人麻呂・小野小町などの36歌人をの和歌を集めた平安時代末期の装飾写本です。このかな料紙製作には、染色を施した多くの紙の中より、原本により近い色を選び、重ね合わせ、1つの部品が完成し、完成した部品と部品をさらに重ね合わす事により完成します。組合せで変わる色の変化を写真でお楽しみください。

かな料紙 常陸太田市 小室かな料紙工房

・源氏物語絵巻
みなさんご存知の源氏物語を題材にした絵巻物です。平安時代末期頃に絵師として活躍した藤原隆能が描き上げたとの説もあります。そして、この製作には染色を施した紙の上に、大小に切断した金箔、銀箔を散らし背景画としています。

かな料紙 常陸太田市 小室かな料紙工房

その他にも多くの古筆があります。

 

かな料紙が出来るまで
このかな料紙が出来上がるまでの工程として、
・和紙を多彩な色に染める
・版木で文様を摺り込む
・金・銀箔を撒く
など、いくつかの作業工程を経て、優美なかな料紙が出来上がります。昔は、分業により多くの職人がいましたが、だんだんと数を減らし、現在では一人で多くの作業を行い、かな料紙を製作しているとのことです。

ではその作業の一部を写真と動画でお楽しみください。

・染紙(そめがみ)〜和紙を多彩な色に染める
材料になる楢(なら)の木の皮を釜で煮出し、染料を取り出します。何度も濾してごみなどを取り除きます。この染料をバットに張り、紙を漬けて染めて乾燥し完成です。

かな料紙 常陸太田市 小室かな料紙工房

・唐紙(からかみ)〜版木で文様を摺り込む
和紙に滲みを止めを行い、膠(にかわ)で解いた胡粉(ごふん)を引いて下地を作ります。膠とフノリで解いた雲母(きら)の粉を木版にタンポを使ってむらにならないように付けます。最後に 胡粉を引いた紙を乗せ、バレンで摺り版木の模様を写し取ります。
動画

かな料紙 常陸太田市 小室かな料紙工房

・箔装飾紙〜金・銀箔を撒く
金銀の箔を竹の刀を使って、マス目状に切り、切った箔を竹の筒に入れます。和紙に膠とフノリを薄く解いた液を刷毛で塗ります。液が乾かないうちに、金銀箔入れた竹の筒を撒きます。
動画

 かな料紙 常陸太田市 小室かな料紙工房

・継紙(つぎがみ)
染紙を何枚も重ね一つの束にし、束になった染紙の上に型紙を置き、型に沿って切り込みを入れます。切り抜いた紙を別に切り抜いた紙にはりあわせます。この時、紙と紙の一部をだぶらせながら目の細かいやすりでだぶりの箇所をすり合わせながら、1枚の紙に仕上げます。

かな料紙 常陸太田市 小室かな料紙工房

以上の作業をまとめた【動画】

いかがでしたか? かな料紙の世界。当時の歌人が後世に残る作品と思い製作したかは不明ですが、現にその時代を知る大切な書物となっている事に間違いはありません。今後平安時代の書物を見る目が変わる事間違いなしです。ですが、残念な事にこの素晴らしい日本の伝統文化を支える職人の数が少ないと聞きました。書を書く「かな料紙」ですが、見方使い方を変える事で、また別なアート作品になるのではないでしょうか?
今回の作品を見て色々な使い方を発見してもらうことで、「かな料紙」の新たな世界が広がる事を切に望んでおります。そして、この文化を支える為に何が必要かということが、今後の課題と考えます。つたない文章では伝えきれない作品完成までの工程・繊細な作業は動画をご確認いただければ幸いです。

(文:常陸太田びいきな小坂の窓 画像出典:小室かな料紙工房)

【HP】小室かな料紙工房

〈常陸太田びいきな小坂の窓〉シリーズはこちら


2015/4/15 更新

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