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極寒の地・西和賀から、春を告げるたより〈みちのくエイミー そぞろ旅〉

こんにちは、東北地方を中心に記事を書いているエイミーです。
いまこの投稿を読んでいらっしゃるあなたは、どこにお住まいでしょうか? 東京? 東北? 南のあったかい場所でしょうか?
わたしは、普段は東京に住んでいます。桜は終わり、街の主人公は新緑へと移り変わってきています。あなたのお住まいの土地は、いま何が主人公でしょうか?

今日は、岩手県の中でも特に静かな、小さな町「西和賀町」からのおたよりを紹介します。
この町には、「東北食べる通信」を通じて知り合った瀬川然(せがわ・しかり)くんが住んでいます。然くんは23歳。過疎が深刻と言われている西和賀にだって、あたりまえですがこんなにフレッシュで働き者な若者がいます!
「東北食べる通信」の2014年5月号で、私は然くんのことを初めて知りました。この号では西和賀の自然と蕨を特集しました。その蕨の生産者が、然くんだったのです。
私は西和賀という土地にまだ行ったことがありません。昔から自然が厳しく、実りも少なく、豪雪地帯で、過疎が深刻で、消滅してしまうかもしれない町。そういう印象でした。
しかし、「東北食べる通信」を通して、そして然くんのFacebookを通して知る西和賀の大地は、山菜の宝庫で、自然が本当に豊かで美しく、人々はその自然とともに、心豊かに過ごしているように見えました。
私の印象とは違う西和賀がきっとある。もっと西和賀のことを知りたい。そう思いました。
そんな思いを伝えたところ、西和賀から然くんが手紙を送ってくれました。

~・~*~・~*~・~*~・~

 エイミーさん、こんにちは。然です。
西和賀町は今年いつもより雪が少なくて(それでもまだ田んぼには雪があります)、春も早く来るのではないかと思っています!あ~楽しみ♪
さて、岩手県で一番初めに消滅してしまうと言われている西和賀町から、暮らしの中での魅力、豊かさ、生きることについて、書き綴ってみました。岩手県西和賀町 東北食べる通信

西和賀町とは岩手県の西南に位置し、日本の背骨、奥羽山脈のまっただ中にある、人口約6300人の自然豊かな町です。雪がとても多く、年間平均積雪量が10mを超えるため、特別豪雪地帯に指定されています。しかし、雪から生まれる恩恵は計り知れないものがあり、きのこや山菜といった山の幸や保存食、人々の文化は、この“雪”が織り成しています。その反面、過疎で人口減少が進んでおり、日本創生会議が出した2040年の女性の人口減少化率は岩手県でトップの76%。岩手県で一番初めに消滅してしまう町とも言われています。高齢化率も43%(2010年)と、パッと見回しても高齢者が多い町です。
しかし、西和賀の人々はこの事実に対して、そこまで危機感を感じている様子も見られなく、のんびりとした感じです。まだ20代前半の私は、将来この町で結婚して子供を安心して育てていけるか心配になります。
西和賀町の四季は、どれを見ても濃いのが特徴です。10月の後半から雪が降り始め、5月まで雪に閉ざされます。雪が溶けてカタクリの花が咲き、春が来たと思えば、気温はグングン上昇し、もう夏です。お盆が終わると気温は一気に低くなり、秋が来ます。雨が多くなり、「寒くなってきたな」と思えば、紅葉で色づいてきた山に雪が降ってきます。わかりやすく言うと西和賀の四季は、春と秋が極端に短く、冬を盛り上げるために他の季節があるといった感じです。

雪との向き合い方
この町に住む人は冬が一番キライな季節と言う人が多いです。毎朝1時間~2時間は早く起き、出勤前の除雪。仕事から帰ってきてから、今度は家に入るための除雪。休日は屋根の雪下ろし・・・。休日がまるまる除雪で潰れてしまった時は、ここで暮らす意味を深く考えてしまうこともあります。岩手県西和賀町 東北食べる通信しかし、人を寄せ付けない自然というのは時に、神秘的で美しくもあるのです。
1月。氷点下10℃のよく冷えた満月の夜。真っ白な雪は、満月の青白い光を受け、ダイヤモンドを散りばめたようにキラキラしています。こんな夜は月光と雪の反射光で外がまるで日中のように明るいです。
夜9時に友人に電話し、一緒に雪原の上を歩こうと誘ってみる・・・。二つ返事でOKが出ました。西和賀町に移住してきた若きカメラマンですが、ここの自然に心底惚れこんでしまったらしいです。
歩くスキーで、ナイトハイク!まるでそこはサンゴの砂浜のある海の中のよう。私達はそのまま、ずるずる、月夜の深海に引きずり込まれてしまいました。
豪雪と地吹雪の町、西和賀ではこんな夜は一冬に一回あるかないか。でもこんな夜が一晩あるだけで、「この町に暮らしていてよかった」と心の底から思えます。岩手県西和賀町 東北食べる通信

すべての始まりは冬
一番住む人々を苦しませている雪は冒頭で言ったようにすべての恩恵でもあります。
雪の中から顔を出す植物の芽達はとてもたくましく、山菜なんかは豊富な雪解け水を吸っているため、食べてみると、力強い大自然のパワーを感じます。人々は雪が溶けると水を得た魚のように、山に入り、畑を耕し、生きる喜びを肌で感じます。西和賀における春とは冬の3~5倍の忙しさです。冬の間はこたつで丸くなっていて、腰も曲がっているようなおばあちゃんが、雪がとけた途端に畑に行き、朝早くから夕方遅くまで作業をしている姿は、若い私が見ても圧倒されます。本当に、このパワーはどこから出てくるのか不思議になります(笑)
それだけ西和賀における雪というのは人々にとって、特別なものなんだとしみじみ思うのでした。岩手県西和賀町 東北食べる通信

苦難の先にある春の喜び
3月になると、日差しも強くなってきて、春が来る喜びと、冬が終わってしまう寂しさで複雑な気持ちになります。それでもやっぱり春が来るのは嬉しくて、西和賀の春を象徴するバッケ(ふき)はまるで、そんな西和賀の人々の喜びを象徴しているかのようです。
とある西和賀に嫁いできたおばあちゃんは、ここの冬がとっても嫌で「出て行ってやる」と思ったそうですが、冬という苦難を乗り越えて見たバッケに感動して、「もう一年頑張ってみるか」と、この町への永住を心に決めたそうです。
西和賀の人々の心の根底にあるのは、超豪雪という自然に対して、半分諦めという形での“受け入れの気持ち”だと思います。私も厳しい冬を乗り越えてまた、「もう一年頑張ってみよう」という気持ちになるのでした。岩手県西和賀町 東北食べる通信

そして、今西和賀町は4月です。
雪が例年よりも少ないため、「春が来た!」という喜びも少ない気がしますが、やはり外を歩いているおばあちゃんなんかを見るとニヤニヤしてきてしまいます。山に行けば、食べるものがたくさんあるし、もう少ししたら採りに行こっと!
西和賀に来てくれたら、山菜が採れる秘密の場所を特別に教えちゃいますよ。

お待ちしています。

〈みちのくエイミー そぞろ旅〉シリーズはこちら冬の湖

 

 

 

 

 

 

 


2015/4/14 更新

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