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〈北海道〉ヒグマにトド…厄介者?おいしく変身 北のジビエ、高まる人気

エゾシカ、ヒグマ、トド、ウチダザリガニ…。農林漁業に被害をもたらすなど「厄介者」として扱われることも多いが、狩猟や駆除で捕獲されたうち一部は食材として活用されている。どんな料理に変身しているのか。そして、そのお味はいかに―。

■ヒグマ 熟成モモ肉とろける脂

ジューッ。鮮やかな赤みを帯びた肉片をフライパンで焼く。香ばしいにおいに思わずつばを飲み込んだ。20日ほど前にハンターが仕留め、熟成させた十勝管内のヒグマのモモ肉。口にすると、舌の上でフワッと脂が溶け出す。一見すると脂身が多いが、その脂が甘くておいしい。

「みんなこの脂にはまる。融点が低いので、人間の舌の温度で溶けるから冷めてもパサつかない」と帯広市内の食肉処理場「狩人の蔵」代表の引地安久さん。硬さや臭みもなく、ペロリとおいしくいただいた。

道によると道内のヒグマの生息数は推定2200~6500頭。農林業被害は年間約1億円で、市街地への出没が多発するなど人とのあつれきは深刻だ。2012年度の捕獲数は699頭。

「害を及ぼすとはいえ、いただいた命。適切に処理して無駄なく活用することが大事」。ハンター歴30年以上の引地さんは力を込める。8年前に食肉処理の許可を得て、地元ハンターや自らが仕留めたヒグマ、エゾシカなどの精肉や加工品を販売。モモやヒレ肉が人気で、スネや首筋など需要の少ない部位は缶詰に。胆のうは漢方薬、毛皮や爪、牙はアクセサリーなどに変身する。

肉はクチコミで広がり、全国の飲食店から注文が入る。ジビエ(野生鳥獣の肉)料理に力を入れるフランス料理deco(東京)の室田拓人シェフは「北海道のヒグマは注目食材で、人気も高まっている」と評価する。

■エゾシカ つくだ煮をお茶漬けで

「シカの日」を知ってますか? 増えすぎたエゾシカの食利用を広めようと、道が2010年秋に毎月第4火曜日を「シ=4」「カ=火」の語呂合わせで設定。参加店は、エゾシカ料理を提供するなど、さまざまなサービスを行っている。

日本茶専門店「玉木商店」(札幌市中央区)は通年、エゾシカのつくだ煮をお茶漬けで提供している。「お茶屋がなぜシカかと不思議でしょ」。玉木康雄社長は笑いながら、つくだ煮の載ったご飯に熱々のほうじ茶を注いだ。狩猟免許を持つ玉木社長が「毎日食卓で味わってほしい」とつくだ煮を考案。厳選したほうじ茶で煮込み、香りを生かした風味だ。

道によると、13年度のエゾシカの推定生息数は10年前より4割増の56万頭。捕獲の成果で10年度の65万頭をピークに減少しているが、高水準が続く。農林業被害は年間約60億円。食利用拡大が食害対策になるため、官民の取り組みが進む。

近年は肉がスーパーや百貨店で販売されるなど、より身近な食材に。コープさっぽろ(札幌)は昨年10月から札幌、苫小牧など道内9店で販売。売り上げは、計画を上回る。「シカの日」は精肉を3割引きで提供している。

以前は「臭みが強い」と敬遠されることもあったが、処理技術の向上で、臭みを感じない人も多い。コープさっぽろ畜産部の奈須野貴大さんは「『口に合わない』と敬遠している人こそ試してほしい」と呼びかける。

■トド あえて臭み残し缶詰に

国際的に「準絶滅危惧」に指定されているトド。「海のギャング」とも呼ばれ、道内沿岸部などで深刻な漁業被害をもたらしている。2013年度の被害額は約20億円。被害に歯止めをかけようと、今秋から駆除上限数は従来の2倍の501頭になった。

捕獲したトドは有効利用が望ましいが、肉は臭みが強くあまり食用には向かないとされている。そんな中で缶詰を製造しているのが札幌市西区の食品加工業「北都」。道内で捕獲されたトドを「カレー」や「大和煮」などにしている。

大和煮を食べてみると、野趣あふれる味が口中に広がった。みそとショウガが臭み消しとなっている。八木誠一郎社長は「珍味として楽しんでもらえるよう、あえてある程度の臭みを残している」と話す。

JR札幌駅の北海道どさんこプラザ札幌店によると「物珍しさで購入する観光客が多い」といい、年間約300個売れている。

■ウチダザリガニ エビに似てプリプリ

生態系を乱すとして特定外来生物に指定されているウチダザリガニ。札幌市中央区のレストラン「ビストロ・ラ・マルミット」では、2年前からメニューに上っている。

鍋で3分ほどゆでると、黒ずんだ色から鮮やかな赤色に変わり、エビに似たプリプリとした食感を楽しめる。

ウチダザリガニは、道内では昭和初期に食用として摩周湖に放され、その後、生息地が拡大した。各地でボランティアなどによる駆除が行われているが、脅威的な繁殖力に追いついていない。

水野孝司店長は「メニューとして出すことで、お客さんが少しでも外来生物について考えるきっかけになれば」と話している。(北海道新聞より)

エゾシカ ジビエ料理


2014/12/8 更新

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