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実はけっこう大変! スイカ割り〈スタッフよもやま〉

スイカの季節も終盤に突入。夏を代表する果物スイカをぞんぶんに楽しんだだろうか?
私にとってのスイカの思い出は、夏休みにいとこたちと田舎の家の縁側に座って食べていたこと。八分の一くらいに切った大きなスイカを、昭和末期に流行った志村けん食い(端から端まで豪快にかつ早食いする食べ方を勝手にこう呼んでいた)しながら大笑いしていた。スイカは、楽しい夏休みを連想する、そんな食べ物だ。

海水浴先の砂浜や、キャンプ場では、スイカ割りをよく見かける。目隠しをして長い棒を持ち、周りの声に誘導されながら、たどり着いた先のスイカを叩く。見事割れたら、大喜び。割れなかったら、ご愛嬌。最後にスイカをみんなで食べる。なんて楽しい遊びなのだろうか。スイカ割り

そこで、考えた。そもそもスイカ割りって、何か特別な意味やルーツはあるのだろうか? 誰が最初にはじめたのだろう?

調べてみると、「豊臣秀吉が安土城建築の時に場を盛り上げるためにはじめた」とか、「京都の地主(じしゅ)神社にある恋占いの石に、10m離れたところ から目隠ししてたどり着くと恋が実るという言い伝えが起源」とか、ほかにも「佐々木小次郎の頭をスイカに見立て、その怨霊を静めたという伝説が発祥」という説や、「スイカの豊作を占うアフリカの風習が伝わった」など。

江戸時代に剣術の訓練で行われていた、刀を素早く抜き野菜や果物を切断するといった「居合抜き」は、スイカ割りの行為ととてもよく似ているので、江戸時代の「居合抜き」がスイカ割りの起源という説もある。

とにかくあれこれ地域も時代も雑多に出てきて、結局真偽のほどは不明だ。

いろいろなルーツを持つということは、それだけ、スイカ割りが楽しまれた遊び? であることは、確かなのだろう。スイカのシーズンの夏にしかできないという点でも、限定感のある季節行事の意味合いを持つのかもしれない。

海外でも、スイカ割りをするのだろうか? アメリカやメキシコで、子どもの誕生日などに、目隠しをして、キャンディーなどのお菓子が入ったくす玉を棒で叩く、ピニャーダというものがある。「目隠し」「棒で丸い物を叩く」というところがスイカ割りとよく似ている。ヨーロッパでは、力だめし的に、素手でスイカを叩き割ったり、頭突きで割ったりという見世物行為は行われているようだが、棒は使わない。

やはり、わたしたちがやっているスイカ割りは、日本独特のものであるらしい。

Pinata ピニャータ

ピニャータはメキシコや他の中・南米の国の子供のお祭り(誕生日など)

日本へのスイカの伝来

では、スイカは、いつ日本に来たのだろうか? まず、「西瓜」という漢字から推測すると、西の方から伝わったのだろう。調べてみると、スイカ栽培の起源は古く、4000年前に古代エジプト人が栽培したことが絵画で立証されていた。エジプトでは種を食べるために栽培していたようだが、その後、地中海地方や東アジアで果実として発達した。原産地の南アフリカから11世紀ごろ中国に、1世紀ごろヨーロッパに、17世紀に入ってアメリカへと伝わって行った。

日本へ伝わった時期については諸説ある。安土桃山時代にポルトガル人が持ち込んだという説や、有名なのが、17世紀中期に禅宗の僧侶隠元禅師が中国から持ち帰ったといわれる説である。隠元禅師は、インゲン豆を日本に伝えたことでも知られているが、スイカも持ち込んだとしたら、日本の夏の風物詩をひとつ作ったという大きな功績となる。真偽のほどは不明だが、鳥羽僧正(1053~1140年)の「鳥獣戯画」にスイカらしい絵が描かれていたことから、もっと古い時代に伝わって平安朝後期に作られていたのではという説もある。

いずれにせよ、スイカは古くから日本人に親しまれた果物である。江戸時代には、暑い夏を涼やかにする食べ物「水菓子」として、ウリなどと共によく食べられていた。スイカは水分がほとんどなので、実際に体を冷やしてくれる作用がある。

スイカ割りの公式ルール

話題をスイカ割りに戻す。スイカ割りは、いや、“本当のスイカ割り”は、目隠しをして棒で叩いて割ればいいという、簡単なものではないらしい。実は、日本スイカ割り協会(JSWA:Japan Suika-Wari Association)というところが制定した公式ルールなるものがあり、これが結構うるさい。

すいか割り
以下にそのルールを紹介する(黙っていられないので途中ときどき感想をさしはさませていただく)。ちなみに、このルールは、「JAみちのく村山」のウェブサイトに掲載されている。山形県村山市は、日本有数のスイカの産地だ。「日本一」のスイカ産地である同じく山形の尾花沢市と合わせ、くだもの王国山形は、スイカ割りの聖地と呼べよう。

(参考)
JAみちのく村山 http://www.mitinoku.or.jp/tokusan/suika_wari.htm
尾花沢市観光物産協会 http://www.obane-kankou.jp/

第1条 (競技場所)
・スイカ割りはどこでもできるスポーツだが、できれば『砂浜』又は、『芝生の広場』で行う。
・スイカと競技者(割る人)の間の距離は、5m以上7m以内とする。
スイカ割りといえば砂浜のイメージだが、芝生の広場でもいいようだ。その方が後始末が楽な気がする。距離も決まっているので、メジャーを持って行った方が便利かもしれない。

第2条 (用具)
・棒は、直径5cm以内、長さ1m20cm以内の棒とする。
・目隠し用として、手拭またはタオルを準備する。
・スイカは、『日本国産スイカ』を用いる。
棒のサイズも決まっていたし、国産と限定しているので、もしスーパーで買ってやる場合は、チェックを怠らないようにしたい(夏に行えばたいがい国産のような気もするが)。

スイカ写真第3条 (競技者)
・競技者はスイカを『割る人1名』と『サポーター複数』で1組とし、キャプテンを決める。『サポーター』は人数に制限はないが、『割る人』に対して『アッチだ』『ソッチだ』と的確なアドバイスを出さなければいけないので、事前に自分のサポーターの声を認識しておくこと。
・審判員となるには、スイカが大好きであることを条件とする。また、公正な道徳心を持つ健康な人であり、特に以下の設問に3問以上答えられる人とする。

(1)スイカの一番甘い部分はどこか?
(2)スイカの水分はどのくらい?
(3)おいしいスイカの見分け方は?
(4)スイカの種ってどのくらいあるか?
(5)スイカの原産地は?
審判になるには条件があるのが、びっくり。これは、スイカに詳しい仲間を探して連れてスイカ割りに行かなければならない。

第4条 (競技の開始)
・審判員は、距離と用具を確認する。
・割る人の目隠しを確認する。この時、相手チームのキャプテンを同席し了解を得る。
・フォーメーションローリング(スタートする時の回転)を行う。
回転方向は右回りで、回転数は5回と3分の2回転とする。

第5条 (競技の進行)
・競技者(割る人)の持ち時間は1分30秒とする。審判員は、競技終了30秒前と10秒前に報告する。
・サポーターからのアドバイスにおいて、以下の行為を禁止する。
(1)競技と関係のないアドバイス
(2)競技者を中傷するような言動
(3)スイカの真後ろに立って「私の声のする方へ」という指示
・1人の競技者が終了したら、第6条により勝負の判定を行う。
・勝負の判定が終わったら、次に、相手チームとスムーズに交代する。
割る人は1分30秒の間にスイカの位置まで正確にだどり着かなければならない。結構スピードを要する競技であることがわかる。ある程度思い切りが大事ということか?

第6条 (勝負の判定)
・スイカに当たらなかった場合、時間内であれば3回まで棒を振ることができる。
・以下の点数表を参考に審判員が点数をつける。
◆空振り:0点
◆スイカに当たった:1点
◆スイカにひび割れができた:2~4点(ひび割れの程度による)
◆スイカの赤い果肉が見えた:5~10点

第7条 (後始末)
・勝ったチームは、スイカを食べる権利があり、負けたチームは、残ったら食べることができる。
・競技場所は、勝負の勝ち負けに関係なく、きれいにしゴミは持ち帰ること。

ここまで細かいの!? と、うんざりした人もいるだろう。これまでワイワイ楽しむだけでスイカ割りをしたいあなた、この夏の終わりの思い出作りに、公式ルール通りのスイカ割りにチャレンジしてみてはいかがだろう。ここまでくれば立派なスポーツだ。ちなみに、本気でやってみたい人は、(今年はもう終わっているかもしれないが)全国各地で開催されている、正式な「スイカ割り大会」に出場してみるという手もある。あなたの街でも開催されているかもしれないので、まずは、検索を。(文・黒川豆)


2014/8/25 更新

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