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〈日本の民話:沖縄県〉無人島に流された男

現代にも脈々と次がれる、地域の食文化にまつわる民話は多いですね

無人島に流された男(沖縄県の民話より)

むかし、八重山群島の1つ、黒島に多良間真牛(たらま まうし)という青年がいました。
真牛はある日、西表島(いりおもてじま)の田んぼに苗を植えるため、種籾(たねもみ)を舟に積んで黒島を出た。この黒島では米が取れないので、人々は舟で西表島まで行き、そこで田んぼを作っていたのだ。

ところが、途中で台風が真牛の舟を襲い、舟は転覆し、真牛は海の中へ投げ出されてしまった。真牛は、種籾の入った木箱にしがみ付き海を漂流した。数時間後流木を見つけ、今度はこの流木に乗って更に7日間流された後、真牛は無人島に流れ着いた。
無人島にはバナナ、パパイヤなどの果物が豊富で、また海岸の浅瀬で魚を取ることもでき、ひとまず食べ物に困ることはなかった。そこで、真牛は木を切 り倒して小屋を作り、海で採ったシャコ貝をなべ代わりに使って生活した。さらに、持ってきた種籾を植えて、米のご飯も食べられるようになった。こうして無 人島での快適な生活が始まった。

ところが、真牛にとって一番の苦痛は、誰も言葉をしゃべる相手がいないということだった。仕方がないので、真牛は時々鳥や魚たちに向かって話しかけていた。そうしている間に10年の歳月が瞬く間に過ぎていった。

10年目のある日、無人島の沖に1艘の帆船が通りかかった。真牛は浜辺に出て、声の限りに叫び、助けを求めた。しかし帆船は真牛には気がつかず、通り過ぎて行ってしまった。真牛は、砂浜で声を上げて泣いた。

それからさらに3年が過ぎた。、真牛は日夜神さまに祈り、心の救いを求めていた。すると3年目のある日、真牛の夢枕に白髪の老人が立ち、こう告げた。
「明日の朝、海に入り、背の届くところまで進むがよい。海の使いがそちを生まれ故郷まで運ぶであろう。ゆめ疑うことなかれ。」
真牛は目が覚めると、不思議に思いながらも、夢のお告げのとおり海に入り、背の届く辺りまで歩いていった。すると、1匹のフカが真牛の近くに泳いできた。そしてフカは、真牛を背に乗せると、ものすごい勢いで海を走り始めた。
フカは浅瀬まで来ると、真牛を降し、再び海の中へ消えてしまった。気がついてみれば、そこは真牛の生まれ故郷、黒島の海岸だった。真牛は神様に感謝して13年ぶりに故郷の地に立った。こうして、真牛は妻子と再会を果たすことが出来た。

今でもこの島の人たちは、この事を覚えていてフカの肉を食べないそうだ。(参考:まんが日本昔ばなし)

 


2014/4/15 更新

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