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〈日本の民話:北海道〉島になったおばあさん

「摩周湖を訪れて霧で湖面が見られなかったカップルは長持ちする」
「未婚者がよく晴れた摩周湖を見ると婚期が遅れる」
「金持ちが摩周湖を訪れると霧に閉ざされ、貧乏人が訪れると晴れる」

霧は6月から7月にかけて多くなり、湖が一日中見える日はひと月のうち約15日、時々見える日が約10日、全く見えない日が5、6日、というからかなりの頻度で霧が発生するデータがあるそうです。

そんな、摩周湖の霧にまつわるお話。

島になったおばあさん(北海道の民話)

昔、アイヌの民はコタン(小さな宅地のこと)と呼ばれる集落を作り、森で獲物を取って暮らしておりました。そこに強い酋長エカシがいて、彼には、年老いた優しい母親がいました。

ところがある時を境に、森で獲物が極端に取れなくなり、別のコタンと獲物をめぐって争いがしばしば起こるようになりました。 酋長のエカシは思い余って、相手のコタンの酋長に話し合いを持ちかけようとしましたが、その矢先に、相手のコタンが強襲してきてしまいまし た。エカシは大怪我をしてしまい、おばばに自分の幼い息子、トンクルを託しておばば達にこのコタンから逃げるように言いました。
燃えるコタンを後にして、おばばは必死になって孫を守ろうと走りましたが、父が殺されたことを知ったトンクルは「仇をとる」と言って、元いたコタンの方へ走っていってしまいました。おばばは心労のあまり倒れふし、気がついた頃には夜になっていました。

疲れた体を引きずって、やっと思いで元のコタンにたどり着きましたが、既にそこには誰もおらず、トンクルの姿はどこにもありませんでした。変わり果てたコタンに座り込むおばばには、もう泣く力も残ってはいませんでした。

翌朝、おばばは声も限りにトンクルの名を叫び探し続け、摩周湖のほとりへやってきました。すると山の神カムイヌプリが現れて、なぜそのように嘆いているのかを尋ねました。おばばは事の一部始終を話し、
「山の神様、私を島にしてください。そしてどうかこの湖にいつまでも置いてください。私はここでトン クルが帰ってくるのを待ちたいのです」
カムイヌプリはそんなおばばの心にうたれ、おばばを摩周湖の島にしてあげました。

それからというもの、おばばは摩周湖に人がくるとトンクルが帰ってきたと思って泣くので、どんな晴れた日でも必ず雨が降り、雪がふるんだとさ。(参考:まんが日本昔ばなし)

「摩周湖」の語源について。
アイヌ語で「マ」は「小島」、「シュ」は「老婆」から。「マ・シュ」は「小島の老婆」という意味があるそうです。霧の摩周湖 島になったおばあさん


2014/4/15 更新

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