石巻に現れた本のスペース
石巻のまちなかに週末だけオープンする本のスペースがあります。
石巻駅より徒歩10分、のぼりと木製のディスプレイ棚が目印のこの場所は「石巻 まちの本棚」と名付けられ、本に関するあらゆるコミュニケーションを実践しています。朗読会や著名人の蔵書を公開する本棚コーナー、出版記念のブックトーク、写真展などの展覧会、本に関するイベントだけに留まらず、本と相性のいいたくさんの企画を積極的に展開しています。
まちなかに本がある風景をつくる
この場所ができたきっかけは2012年石巻で開催された一箱古本市。徒歩圏内に複数箇所設置された会場をめぐり、多くの人が本を求めてまちなかを散策しました。
かつては石巻の中心市街地には6店舗の新刊書店が存在しましたが、東日本大震災で津波がこの場所を含めた中心部の商店街を襲う以前から、商店街の衰退とともに街角から本のある場所は消えてしまっていました。
一箱古本市で改めてまちなかに本がある風景の大切さを実感し、その1年後の2013年7月に「まちの本棚」のオープンが実現しました。
まちのための本棚をみんなで考えて、つくる。
「まちの本棚」は東京・谷中を拠点に東日本大震災の被災地に本を届ける活動をしている「一箱本送り隊」と、石巻のまちづくりプラットフォーム「ISHINOMAKI2.0」の共同企画で生まれました。
編集者や作家が中心メンバーの「一箱本送り隊」が、本好き同士の気持ちに立ち、「自分だったら読みたい本」を全国から集められた本の中から蔵書として選んでいます。パッと見わたせるくらいの本棚ですが、いったん見始めると、すみずみまでじっくりみていくお客さんも多数います。
一箱古本市に参加したメンバーが中心となって運営されており、月に1度の会議では、企画が生まれることも。「だれかに贈りたい本」というテーマで全国から本を募集し、送り主からのメッセージカードとともに沢山の本が集まったこともあります。
手作りの温かい本棚
外からも目を引く漆喰の壁に木でつくられた小部屋が並ぶ内装は、住宅雑誌8誌による復興応援プロジェクト「hope&home」からセルフビルド建屋の部材をもらいうけて、2013年6月に建築家 畠山サトルさん指導のワークショップで組み立てられました。
漆喰の壁は、左官職人狭土秀平さん(飛騨高山)、今野等さん(石巻)らによる左官ワークショップで地元の人たちと共に仕上げたもの。所どころ入っているラインは、土で彩色されたもの。
日常的に本があるまちに
開館中は本の貸出や古本の販売もしています。この場所は、以前本屋だったこともあり、また本屋ができたのかと懐かしがって来られる方もいます。いつぞやは近所の小学生が5~6人やってきて、ゴロゴロしながら調べもの?を始めました。元本屋を営んでいた大家さんも居合わせて、「あら、もしかして○○さんのとこの子かな?」「え!なんで知ってんですか!」「だってお父さんの小さい時にそっくりだもの~」「んじゃコイツは?○○屋の息子!コイツはねー・・・」などご近所ならではの会話が思いがけずはずむことも。
本のある風景を定着させるためにまちの本棚では、これからも本に関するあらゆる企画を打ち出して行きます。石巻に立ち寄った際に一度訪れてみてはいかがでしょうか。
「石巻 まちの本棚」
開館日:毎週土・日・月曜日
開館時間:11:00~18:00
所在地 : 石巻市中央2丁目3-16 (地図はコチラ)
問い合わせ: bookishinomaki@gmail.com
※朗読会など貸切利用も可能です。お気軽にお問い合わせください。
2014/4/16 更新